環境モデル都市・飯田

去年の6月6日の夜、飯田の町の灯りが消えて、町のシンボルであるリンゴ並木の商店街では、「竹宵」という竹に細工を施して作られた灯篭にやわらかいろうそくの火が灯された。
令川で行われる「100万人のキャンドルナイト」に賛同して行われた「竹宵まつり100万人のキャンドルナイト・南信州」と銘打ったこの取り組みに5000人もの人が訪れた。
「飯田で初めてキャンドルナイトをやったのは、03年のクリスマスのこと、故人が公園に集まって、ろうそくを灯しました11ものすごく寒かったなあ」。そう振り返るのはNPO法人南信州おひさま進歩の事務局長である原亮弘さん。その後、飯田の各所でキャンドルナイトは行われてきた。
飯田巾は巾内3000軒もの家で生ゴミだけを分別して堆肥化したり、いちはやくレジ袋を有料化するなど、環境への取り組みを熱心に行い、環境モデル都巾に指定されている そんな地域にあって、この活動を仲間内だけにとどめず、多くの人の環境への気づきの場となればと「竹宵まつり」として人々的に開催したのだ。NPO法人いいた自然エネルギーネット山法師の事務局長である平澤和人さんや山法師の原一樹さんが中心となって、開催に向けてさまざまな人をつなげることになった。

竹宵がっなぐ地域の輪

竹宵は巾内各地で組織する竹宵の会によって3000本がっくられた。竹宵の会のさきがけとなったのが、飯田市川路の「川路竹宵」。川路をはじめ南信州には竹林が多くあるが、竹の需要が減って荒れていく一方の竹林を危惧していた頃、大分県臼杵巾の竹宵のおまつりに出合う。そこからヒントを得て、2002年の大晦日、地区の鎮守の森である川路神社の120段の石段と境内を竹宵で灯し、それから毎年続いている。
今、川路の取り組みは市内の6グループへ広がっている。。年4川、地区で竹宵を灯す「麻績竹宵の会かぐや姫」の会長櫛原綱山さんは、「活動を通じて薄れていた地区の縦のつながりが再び生まれた」と言う。
竹宵はほぽI度しか使えないが、竹炭として再利用するなど、環境への配慮にぬかりはない。一万で、昨年の開催を終えて石油を原料とするろうそくを使うことに疑問を感じ、カーボンニュートラルな蜜ろうのろうそくをつくることを提案したのが、原一樹さんだ。そこで今年は、家庭や店舗用に地元のの養蜂家から蜜ろうを仕人れ、巾内南原にある通所授産施設のあゆみ園が小さなりんごをかたどったろうそく「蜜ろうアップル」を制作している。
縦外イベント川にはできる限り他物山来のものや、使いかけのろうそくを用いることにした。
蜜ろうアップルを販売するのはりんご並木の店舗など。商店街でバーを営むかたわら、若手で並木連隊アップルレンジャーを結成し商店街の活性化に取り組んでいる伊藤、彦さんは、「環境の勉強を始めて、商店街の収り組みも環境に配慮すべきだと思いました」と、商店街の活性化と環境とを結びつけて考える。

りんご並木から南信州へ

さらに、今年は飯田巾にとどまらず、周辺の阿智付の昼神温泉も会場のひとつとなる昨年のイベント終了後、昼神温泉の旅館桂月の小島嘉治さんが、使い終わった竹宵を譲ってほしいと事務局に依頼したことがきっかけ。語り受けた竹宵を使って風笛の盆という地蔵盆の際に灯した。
その幽玄さが地元でも好評を博し、実行委員会からともにやらないかと声がかかったときには、ふたつ返事で賛同した。
旅館は大量のゴミを排出することや大量のエ不ルギーを使うことなど、環境への負荷が大きいことから、昼神温泉の旅館ではより環境問題には熱心に取り組んできていたことも、今回の収り組みに参加することに大きく影響した。「お客さまとともにエコを考えるきっかけになれば」と小島さん。
飯田の「竹宵まつり」の収り組みは、環境という人きな目的を主軸に、地域づくりや福祉との連携、商業の活性化、観光の新しい道筋の提案など、さまざまな分野が結びついて波及している。「まちづくりをしよう」と声高に叫ぶまちづくりは、一過性で終わることも多い。一方で、それぞれに理念を持って活動する人たちが無理なく、ゆるやかに結びついていく飯山の活動は、地域に根を張り、持続可能なまちづくりを実現していく力強さを持っている。